投資交渉が報じられたアップルのティム・クックCEO㊧とオープンAIのサム・アルトマンCEO(6月、米カリフォルニア州)

【シリコンバレー=中藤玲】米アップルと米エヌビディアが、米オープンAIに投資する方向で交渉していることが29日、明らかになった。複数の米メディアが報じた。オープンAIにとっては、人工知能(AI)技術の囲い込みを巡る競争当局の監視を避けるために資金源を多様化する狙いがある。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は28日、米マイクロソフトなどがオープンAIに数十億ドルを追加投資する方向だと伝えた。オープンAIの企業価値は1000億ドル(約14兆5000億円)に達する見通しだ。

オープンAIによるこの資金調達の一環で、アップルが投資についてオープンAIと交渉しているとWSJが29日に報じた。米ブルームバーグ通信は同日、エヌビディアも参加を検討していると伝えた。

アップルとエヌビディアの投資が実現すれば、マイクロソフトに加えて時価総額の世界上位3社がオープンAIを金銭的に支援することになる。投資することで、生成AI開発で先行するオープンAIの技術への長期的なアクセスを狙うとみられる。

アップルは6月に発表した自社の生成AIサービス「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」で、オープンAIが開発した対話型AI「Chat(チャット)GPT」と連携した。

アップルのAIで処理しきれない複雑な質問などに対し、音声アシスタント「Siri(シリ)」を通じてチャットGPTが回答する。

アップルはチャットGPT以外にも、米グーグルの「Gemini(ジェミニ)」など様々な生成AI技術と連携させていく考えだ。アップルがオープンAIに投資すれば両社の関係はさらに深まる。

エヌビディアにとっても高成長を維持する上で、オープンAIとの関係が重要になる。オープンAIはチャットGPTなどAI技術の開発に大量の画像処理半導体(GPU)を使う。エヌビディアはオープンAIと創業初期から連携し、生成AIブームを黒子として支えてきた。

エヌビディアは近年、生成AIを手がけるカナダのコーヒアなど有力な新興企業への投資に積極的になっている。開発企業と連携することで、AI半導体の経済圏を広げたい考えだ。

マイクロソフトはオープンAIに2019年から計130億ドルを投資して開発を支援してきた。米当局は両社の蜜月関係が反トラスト法(独占禁止法)に抵触していないか調査を進めている。そのためアップルとの提携は、監視の目を避けるためのオープンAIの全方位外交だと見る向きもあった。

オープンAIは23年にチャットGPTの基盤となる大規模言語モデル「GPT-4」を発表し、24年5月には改良版を投入した。AIの性能向上にはより多くの半導体とデータが必要で、先端技術の開発には数百億円規模がかかる。激しい開発競争が続く中で投資が先行し、外部からの資金が必要になっている。

アップルは初期段階のスタートアップ企業を買収して技術を取り込むことは多いが、秘密主義で知られ、他社と協調した投資は珍しい。

16年には中国配車アプリ最大手の滴滴出行(ディディ)に、17年にはソフトバンクグループのソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)に出資している。

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