北海道電力が再稼働をめざす泊原発(北海道泊村)について、審査する原子力規制委員会が24~25日、12回目の現地調査をした。規制委の審査は終盤にさしかかっていて、今後の行方が注目される。
2日間の調査は、「審査の書類に抜けている項目がないか、雪が降る前に現地で調べる」(規制委の担当者)のが主眼。9月に新しく委員になった山岡耕春(こうしゅん)・名古屋大名誉教授(地震学・火山学)らが、原発内外の地層や地形、周りにある火山がかつて噴火した際に出た火砕流の痕跡などを見て回った。
山岡委員は調査を終えた25日午後、「(これまでの北電の説明に)特に追加すべきことはなかった」と述べた一方、「実際の観測で得られたデータと、北電の推論が入り交じっているところがある」と、資料の構成を改善するよう指摘。現地で応対した北電の原田憲朗・常務執行役員(原子力推進本部副本部長)は「今後資料をまとめていく際に十分留意する」と話した。
泊原発は1989年に1号機、91年に2号機、2009年に3号機が営業運転を開始。北電は、最も新しく出力も大きい3号機(91万2千キロワット、1~2号機は57万9千キロワット)の再稼働をまずめざし、13年に再稼働に必要な審査を規制委へ申請した。だが審査書類の不備などをたびたび指摘されたうえ、22年には札幌地裁が、津波対策の不備を理由に運転の差し止めを命じた。
その後の審査で、原発の建屋や設備の耐震設計のもとになる「基準地震動」や火山活動への評価については北電の主張が「おおむね妥当」と認められ、今は、津波対策の目安となる「基準津波」の設定や、原発の沖合にある活断層が論点になっている。北電は年内にもこれらの説明を終えたい考えだ。
加えて北電には、津波が起きたとき、核燃料などを積む輸送船が漂流しないよう、新しく港を整備する構想もある。ただ、これらを含めた3号機の安全対策工事費は少なくとも5千億円を超える見込みで、当初に考えていた額から17倍に膨張。北電は「削減への努力を続ける」(原田常務)とするが、将来的には電気料金に跳ね返る可能性もある。(上地兼太郎)
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