環境省は12日、2022年度の国内の温室効果ガス排出量は二酸化炭素(CO2)換算で11億3500万トンで、前年度から2・5%(2900万トン)減ったと発表した。新型コロナウイルス禍からの経済回復の影響で前年度は8年ぶりに増加したが、再び低下傾向に転じ、1990年度以降で最低となった。
同省によると、温室効果ガスのうちCO2の部門別排出量は、産業(工場など)3億5200万トン(前年度比5・3%減)▽業務その他(店舗など)1億7900万トン(同4・2%減)▽家庭1億5800万トン(同1・4%減)――など。運輸(自動車など)は1億9200万トン(同3・9%増)で唯一増加した。コロナ禍で控えていた旅行を再開する動きが旅客輸送量の増加に影響したとみられる。
排出量から森林などによるCO2吸収量を差し引いた正味の排出量は10億8500万トン(同2・3%減)。吸収量は前年度比6・4%減の5020万トンだった。かつて整備した森林が老木となって吸収が鈍化しているといい、今後も減少傾向が続くとみられる。
また、22年度分では「ブルーカーボン」(海の植物が吸収するCO2由来の炭素)の一つとして注目される沿岸部の藻場(海草・海藻)による吸収量35万トンを初めて算定した。
政府は30年度までに13年度比で46%削減する目標を掲げている。13年度を基準にすると、22年度の正味の排出量は22・9%減。同省は「『50年までにネットゼロ(実質排出ゼロ)』という目標に向けた順調な減少傾向にある」と説明するが、30年度目標の実現には削減をさらに加速させる必要がある。
伊藤信太郎環境相は12日、閣議後の記者会見で「30年度目標や50年ネットゼロ(の実現)は決して容易ではない。地域と共生する再生可能エネルギー導入などの施策を実施し、引き続き政府一丸となって対策を進めていく」と話した。【山口智】
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