次世代の発電方法である「核融合発電」の研究が活発になっています。研究開発は国を中心に数十年にわたって地道に続けられてきましたが、脱炭素技術への投資意欲の高まりでスタートアップに巨額の資金が集まっています。スタートアップが掲げる2030年代の発電実証が可能なのかが今後の焦点です。核融合発電について知るため、参考になる記事を集めました。(内容や肩書は掲載当時のものです)

国際協力で大型実験施設も

トカマク型の実験装置=量子科学技術研究開発機構提供

核融合発電は原子の核同士をくっつけたときに発生する莫大なエネルギーを発電などに利用する技術です。核融合の反応は1932年に発見され、80年代から国際協力のもとで発電の実現に向けて研究が進められてきました。

国際協力では磁場を使って核融合反応を制御する「トカマク型」の核融合炉が採用されました。日米欧などは共同で、国際熱核融合実験炉(ITER)を2007年から建設しています。ITERは核融合反応の長時間制御を目指す実験装置で、日本ではITERの成果を基にした原型炉を建設し、50年ごろの発電実証を目指しています。

【関連記事】
・核融合発電とは 膨大なエネルギー「地上の太陽」
・核融合施設「ITER」、稼働は数年遅れ なお国際研究の柱
・核融合向け初期実験、国の機関が成功 国際研究に貢献
・核融合実験で世界記録 英国の装置、発電は技術課題多く

レーザー使う技術に脚光 

レーザー核融合の実験装置=米ローレンス・リバモア国立研究所提供

研究では先行していたトカマク型ですが、核融合発電を目指すスタートアップは他の方式を開発する企業が増えています。例えば大阪大学発スタートアップであるエクスフュージョン(大阪府吹田市)は、レーザーを使って核融合を起こす「レーザー方式」で30年代の発電実証を目指しています。

日本ではそのほか、「ヘリカル型」という特殊な炉型で磁場を制御して核融合発電をするヘリカルフュージョン(東京・中央)や、逆転磁場配位型を応用した炉を使うリニアイノベーション(東京・港)があります。海外にはさらに多様な方式で核融合発電を目指すスタートアップが乱立しており、米国の核融合関連の産業協議会の調査では、23年6月時点で合計約62億ドル(約9600億円)を調達しています。

  • ・2030年代にレーザー核融合発電 日本軸に開発動き出す
  • ・ヘリカルと核融合研、核融合炉の超電導部材を共同開発
  • ・日大と筑波大、核融合新興を設立 30年代に発電実証
  • ・夢の核融合 調達100億円超スタートアップは14社

産業協議会が発足 2国間協力も活発に

首脳会談で握手を交わす岸田首相(左)とバイデン米大統領(4月10日、米ホワイトハウス)=共同

核融合発電は技術的なハードルが多く、実現には企業間の連携が欠かせません。政府は3月にフュージョンエネルギー産業協議会を立ち上げました。三菱重工業やIHIなど機械・プラント企業をはじめ、三井物産、住友商事、NTT、INPEXなど幅広い業種から50社超が参加します。国内外の販路開拓などを行います。

国家間の協力体制を構築する動きも広がっています。日米は4月の首脳会談に合わせ、実現に向けた協力を進めるという共同声明を出しました。企業や研究機関の人材の交流や研究施設の相互利用などに取り組みます。日本は欧州とも核融合の推進に関する声明を出しているほか、米国と英国も23年11月に連携協定を結んでいます。中国やロシアも含む多国間で進めるITERの建設が遅れていることも2国間の連携を強める背景にあるようです。

・核融合どこまで 発電への道険しく 政府、複数方式支援へ200億円
・核融合で産業創出 50社超参加の新協議会、海外市場開拓
・日米「先端技術、中国より先に」 宇宙・核融合の陣営強化
・核融合発電、日米2国間協力を軸に 多国間開発に遅れ

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。