太陽表面で起きる爆発現象「太陽フレア」が大規模に発生している影響で11日夜、北海道に加えて本州でも赤い夜空の撮影報告が相次ぐなど、記録的広範囲にオーロラとみられる現象が観測された。一方、フレアに関連して通信障害が起きる恐れもあり、情報通信研究機構は16日ごろまでの注意を呼びかけている。
同機構によると、最大級の「Xクラス」の太陽フレアが8日から13日までに計9回発生。放出された電気を帯びたガス(プラズマ)が11日午前1時半ごろから、地球周辺に到来した。
オーロラは主に北極圏や南極圏で見られるが、この影響で10日以降、赤いオーロラが欧州や米国、中国など中緯度帯で撮影された。
日本でも国立極地研究所の片岡龍峰准教授がX(ツイッター)で呼びかけたところ、南は愛知県、西は兵庫県から、撮影に成功したとの報告があった。
◇「人生で一度は見てみたかった」
日本海に面する兵庫県香美町の地域おこし協力隊、高橋昇吾さん(25)は海岸の展望台から撮影した。「肉眼ではかすかに赤く見える程度だったので、露光を長くして撮影した。人生で一度は見てみたかったので興奮した」と話した。石川県珠洲市でもピンク色のオーロラが撮影された。
名古屋大の塩川和夫教授(宇宙空間物理学)によると、これほど低緯度でオーロラが見られるのは、2003年に滋賀県などで観測されて以来、約20年ぶりの規模とみられるという。
塩川教授によると、太陽フレアの後にオーロラが現れるのは、フレアに伴って放出されるプラズマに含まれる高いエネルギーを持った電子が、地球表層の大気中に降り注ぎやすくなるためだ。
大気中の酸素原子や窒素分子にこの電子がぶつかると、高いエネルギーが原子や分子に移って非常に不安定な状態になる。安定した元の状態に戻ろうとして、余分なエネルギーを光として放出することで、オーロラが観測される。
エネルギーの強さによってオーロラの色は変化することが知られている。塩川教授は「低緯度には弱い電子が入り込みやすい傾向があり、赤い色に見える。高いエネルギーの電子では青色、中くらいでは緑色になる」と説明する。
太陽活動は約11年周期で強弱を繰り返していて、来年にかけては極大期に当たる。塩川教授は「極大の前後1~2年は大きな磁気嵐が起こりやすい。磁気嵐はオーロラだけでなく、電子が全地球測位システム(GPS)の電磁波を乱すなど悪影響もある」と話す。【渡辺諒、洪玟香】
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