間もなく登場から1年が経過する現行型アルファードとヴェルファイア。アルヴェルにとって、この1年はどのようなものだったのか。大量のバックオーダーを抱えて、納期も長期間にわたり、いまだ受注停止中だ。クルマ自体の評価は高かったものの、生産や売り方では問題を抱え続けたミニバンキングの成果と今後の課題を考えていく。

文:佐々木 亘/写真:ベストカー編集部

■明確なキャラ分けは良い感じ! なかでもアルファードのHEVは天下一品だ

 安定のアルファード、角のあるヴェルファイアという感じで、それぞれのキャラクターを明確に分けた現行型の両者。かつては顔だけ違う兄弟車だったわけだが、当代からは独自のパワートレインがあったり、足回りのセッティングを変えてきたりと、それぞれの差をわかりやすく出してきている。

 特にヴェルファイアのZプレミア(2.4Lターボ)では、HEV以上のスペックを誇るパワートレインを搭載し、サスペンションの減衰力を高めるセッティングでハンドリングも軽快だ。ただし、硬すぎるとも感じられる乗り心地は、敬遠されることも。賛否は大きく分かれる。

 一方、アルファードは優等生そのもの。エグゼクティブラウンジはもちろんだが、Zグレードでも乗り心地は良いし、燃費も満足のいく数値になる。圧倒的な完成度の高さは、まさにキングの名にふさわしい。

 とりあえずアルヴェルから自由に選べるなら、アルファードのエグゼクティブラウンジかZを選んでおけば間違いないだろう。今後は、新グレードの登場も噂されており、さらに戦闘力は高まるはず。国産ミニバンでは現在もこれからも、敵なしの状態が続く。

■生産体制はいつ整うの? 乗れないクルマはクルマじゃない!

 クルマの出来とは反比例して、生産体制には厳しい言葉をかけざるを得ない。

 アルヴェルの人気から考えれば、月販基準台数8,500台(アルファード7割、ヴェルファイア3割)以上の注文が来ることは、最初から予見できたはずだ。

 登録ベースで台数の推移をみていくと、基準台数の8,500台をクリアできたのは、2023年9月まで。23年10月には基準台数をおよそ600台ショートして、11月には1000台近くのショートとなる。

 今年に入り、1月はアルヴェル合わせて1万台近くの登録となったわけだが、2月には約6,300台の登録にとどまった。初期オーダー分の納期は徐々に短くなったともいわれるものの、発売から現在までオーダーストップの状態はほとんど変わらず、買えない・乗れないクルマになってしまっている。

 アルヴェルに限らず、トヨタの人気モデルの安定供給にはまだまだ時間がかかるだろう。ただし、もはや常態化した超長納期とオーダーストップには、少なからずメスを入れていく必要があると思う。

■予約できるの? できないの? 統一感のない販売対応はどうにかならないものなのか!

 アルヴェルの販売については、走り出しから疑問が多かった。特に販売方法。基本的には事前予約ナシの、発売日オーダー順が販売指針だったはずだが、販社によって対応は大きく分かれた。

 発売日の3か月以上前から、購入希望者からの予約を受け付けたディーラーがある一方で、お達し通りの発売日当日先着勝負にしたディーラーもある。抽選方式を取ったお店の中でも、申し込み期間が異なり、ユーザーはディーラーの姿勢に振り回されることとなった。

 現在も、オーダー再開に向けて予約というカタチで注文を受け、受注を積み上げるお店があるが、別のディーラーへ行けば「現在はお取り扱いできません」と門前払いのところも多い。

 売り方を販社へ一任するのは良いのだが、購入希望者が困らないよう情報はしっかりと公開すべきだろう。何ならメーカー側での抽選一本に絞った方が不公平感もないし、各販社も対応に苦慮しないはず。

 統一感のない販売方式が、混乱を大きくし、生産や販売がクルマの評価を下げることになってしまっているのは残念だ。特に発売から1年が経過するアルヴェルでは、デリバリーの改善が急務である。

 現行型アルファード・ヴェルファイアに関しては、車両の設計やデザインには文句なしの評価を与えたいが、生産・販売面で課題を積み上げたままだ。新グレード投入を機に、注文再開が見込まれる。作り方・売り方の課題をいかに解決していくのか、今後のトヨタと全国の販売店の手腕に期待したい。

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