近年、スポーツカー人気が凄まじい。絶版モノはもちろん、現行車も、「最後の……」という但し書きによって奪い合いになっている。でもロードスターは、そういうお祭り騒ぎから一歩引いて、そっと静かに世界一の存在に登り詰めていた!!
※本稿は2024年3月のものです
文/清水草一、写真/ベストカー編集部、MAZDA
初出:『ベストカー』2024年4月26日号
■マツダ ロードスターという存在
初代ロードスターが歴史的な傑作だったことに、異論はないだろう。2代目、3代目は、そのコンセプトを忠実に引き継いだものの、傑作度では初代に遠く及ばなかったことに関しても、だいたい異論はないと思う。
しかし現在の4代目ロードスターが、いつのまにか原点だった初代をはるかに超え、世界一になっていることに気付いている人は、あまり多くはないのではないか!?
いったいなぜ現行ロードスターは、世界一になったのか。それは、ロードスターが35年間原点から一歩も動かずにひたすら磨き上げていたら、他のスポーツカーがほとんどあっち側に去った一方、時代のほうがこっちに動いてきたからだ。
詳しい内容はこれから縷々記述するので、三時のオヤツでも食べながら読んでください!
■2023年10月のビッグマイナーチェンジで世界一が不動のものに
現行ロードスターは、出た時からとんでもない傑作だった。しかし当時はまだ、デザインを除けば世界一とまでは言い難かったし、マニア的には、「本当はこれで充分なんだけど」と言いながらも、本命は別にいるのが常だった。
あれから9年。ロードスターの美しさは変わらないが時代は変わった。大パワー内燃エンジンスポーツカーは、最後の祭りの真っ最中だが、我ら中高年、そんな無駄な大パワーには本当はもう魅力を感じていない。
逆にパワーの小さいコンパクトなスポーツカーほど魅力的だが、そんなの世界中探しても、現行モデルにはほとんど残ってない!
ロードスターは、先日のマイチェンで走りがさらに磨き込まれ、抜群によくなった。990Sが出た時は、これが究極のロードスターだろうと確信したのに、それを上回っていた!
加えて上級グレードのインテリアは上質感をグッと上げ、ACCもついて清貧一本鎗も卒業した。つまり全方位性を兼ね備えた! もはやロードスターはどのグレードを買っても、世界一楽しいスポーツカーだ。
しかもロードスターは、今や数少ない“普通に買えるスポーツカー”であり、“値上がりしないスポーツカー”でもある。結果的に、走行距離が伸びても気にせずガンガン“乗れるスポーツカー”であり続けている。
ロードスターは宝飾品のような輝きを放っているが、決して宝飾品ではなく、クルマであり続けているのだ! ありがたくて涙が出るぜ!
■“乗れるスポーツカー”ロードスター
ロードスターが世界一のスポーツカーだと言っても、納得できない人はいるだろう。
だが、考えてみてほしい。500馬力以上のパワーを使い切るには、最低でも富士や鈴鹿の本コースが欲しいし、ウデもセミプロ級じゃないと危険だ。
それって結局、レーシングカーじゃないか? 私は以前、570馬力のスーパーカーを所有していたが、公道で楽しむには、決死の覚悟が必要だった。
スポーツカーは本来、公道を気持ちよく走るために存在するんであって、レーシングカーとは違うはずだ。その理想像がロードスターなのだ!
ロードスターの車両重量は約1トン。現在、同クラスのライバルは1台もない。ロードスターの独擅場、ブッチギリである。コペンの車重は1トンを大きく割り込むが、コペンもライバルじゃないネ!
■効果絶大! アシンメトリカルLSD
990Sが究極のロードスターだと確信したのは、軽量かつLSDレスの「S」がベースだったことにある。これまでのスーパーLSDは、ターンインでアンダーステアを誘発していたらしく、LSDがないほうが、公道では走りを楽しむことができた。
ところが、今回採用されたアシンメトリカルLSDは、ターンインで逆にイン側にノーズを入れてくれる。これで走りがクイックになった!
■ロードスターが世界一のスポーツカーである8つの理由
ロードスターは世界一のスポーツカーだ。それを疑うアナタに、ロードスターがそうである8つの理由を挙げて説明する。
●その1:世界一デザインがキュート!
ロードスター最大の美点はデザインにある。こんなにコンパクトでキュートなのに、意外とグラマラス。これ以上のデザインは、ほかの現行モデルすべてを見回しても存在しない!
●その2:世界一くらいサイズがコンパクト!
最近のスポーツカーは大パワー化し、巨大化している。そんななかロードスターは、逆にダウンサイジングに成功。世界一コンパクトなスポーツカーとなった!(コペンを除く)
●その3:世界一くらいサスが柔らかい!
ロードスターのサスペンションの柔らかさはハンパじゃない。サーキットでは引っ繰り返るんじゃないかというくらいロールする! でも公道では、これくらいが一番楽しいんだよね。
●その4:世界一くらいパワーが小さい!
搭載される1.5L自然吸気エンジンの最高出力は136ps。今や世界一非力なスポーツカーだ(コペンを除く)。だからこそ、公道でもパワーを使いきる快感が味わえるんだよ!
●その5:MT比率が7割!
日本ではAT比率が99%に達し、MT車というだけでレア。今やスポーツカーでも、MTは貴重な存在だ。ところがロードスターは、MT比率が約7割に達するという! 涙が出る。
●その6:世界一くらい運転が楽しい!
運転の楽しさにはいろいろな種類があるが、ロードスターは普通にそこらを走っても充分楽しい。だから、運転から得られる楽しさの総量は、ロードスターが世界一なのだ!
●その7:世界一くらい納車が早い!
近年は新車のスポーツカーは買うこと自体が難しく、買えても納車待ちが年単位だったりする。ところがロードスターは、たった2~3か月で納車される! なんと素晴らしい!
●その8:世界一くらい値段が安い!
ロードスターの価格もじわじわと上昇し、現在は「S」(最廉価グレード)でも289万円になった。それでもスポーツカーとして世界一安い(コペンを除く)。素晴らしい!
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