ハートの形の「源氏パイ」と四角いパイにレーズンが載せられた「平家パイ」=浜松市中央区の三立製菓で

 さくさくとした軽やかな食感に、甘さを抑えた素朴な味わいが売りの「源氏パイ」。手に取りやすいサイズで、おやつにつまむ人も少なくないだろう。子どもからお年寄りまで幅広い世代に半世紀以上親しまれている逸品だ。  かにぱんやチョコバットで知られる浜松市の三立製菓が1965(昭和40)年に発売した。きっかけは開発担当者が欧州視察で、ハート形のパイ菓子「パルミエ」に出合ったことだったという。「当時の日本ではパイはまだ高級品だったので、お手ごろな価格で広く味わってもらいたいとの思いで開発を進めた」と、広報宣伝室長の望月沙枝子さんは話す。  源氏パイの名称は66年に放映されたNHK大河ドラマ「源義経」にちなむ。「日本人になじみのある和名にしたいとの思いがあり、話題性も狙った」。ハートの形が、合戦の合図を告げる鏑矢(かぶらや)の先端にある「雁股(かりまた)」に似ていることも理由だそうだ。  原材料は小麦粉とマーガリン、砂糖、食塩で当初から変わらない。幾層にも重ねた生地をカットし、ハート形に焼き上げるが、焼く温度など細かい工程は企業秘密。84年からは兵庫県内の工場で生産しており、配合を少しずつ変えながら味を見直している。  源氏パイの対照とされるのが同社の「平家パイ」。ふんわりとした食感や芳醇(ほうじゅん)なレーズンが特徴だ。2012年の大河ドラマ「平清盛」にあやかり、もともとあったレーズンパイを同年に改名した。「ファンの間で『源平合戦の再現をお菓子で』との声が多かったので」と言う。パイの四角い形は源氏の矢を受け止める的と見立てている。  ただ、売り上げの軍配が上がるのは源氏パイ。売上額は公表していないが「発売当初から右肩上がり。今も生産が逼迫(ひっぱく)している」と望月さん。「ハート形のパイを通じ、より多くのお客さまの心が少しでも温まれば」と願う。  文・古根村進然/写真・斉藤直純

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 源氏パイを含めた各商品=写真=は、各地のスーパーやドラッグストアなどで扱う。「販売価格は店舗によって違う」と望月さん。一口サイズのミニ源氏パイや、秋冬限定の源氏パイチョコ、静岡県限定のピアノブラックなど関連品も豊富で、5月からは「ほろにがカフェオレ味」を期間限定で発売している。源氏パイを使ったケーキやフロランタンなどアレンジレシピも三立製菓のホームページで紹介している。(問)同社お客さま係=電053(453)3181


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