真剣な表情でハンドルを握る今宮重朗さん=愛知県蟹江町で
18歳からハンドルを握る。かつては名古屋から関西地方、四国を結ぶ往復千キロを走り、トラックやフェリー内の仮眠だけで1カ月働き続けたことも。定年後は嘱託職員として主に県内の卸売市場や物流センターへの近距離輸送を担当する。勤務は翌日の未明にまで及ぶ。「日に100キロも走らないが、事故に巻き込まれることはあり得る。100%安全ではないが、働かないと生活が不安だ」 市場に到着し20分ほど待つと、荷役会社の従業員が荷降ろしを開始。フォークリフトを使った作業は約10分で終わった。「次の物流センターが決めた荷降ろし時間まで余裕がある」。市場内の駐車場に2時間ほどとどまった。普段から、状況に応じて仮眠を取るなどしているという。 午後11時20分ごろ出発し、名古屋市港区内の2カ所を巡った。最後の物流センターに到着後、記者がトイレから車に戻ると、今宮さんはハンドルの上に身を伏せて目を閉じていた。夜間の仕事は、やはり体にこたえるのだろうか。 冷凍食品を積み込み、午前1時25分に帰社。荷物を保冷庫に収めると、既に次の出荷準備を進める仲間の姿があった。380人ほどで卸売市場や大手スーパーの物流センターに24時間365日、食品を届ける。「僕たちの仕事に終わりはない。ただ引き継ぐだけ」と今宮さん。食卓を陰で支える仕事への思いを語る。 午後7時以降に限っても、指定された荷降ろし時間や作業の準備を待ったりする「荷待ち時間」が計約150分に上った。トラックを走らせた90分を大幅に上回り、運転手にとって効率的な働き方とは感じられなかった。 残業規制による収入への影響も気になる。かつては休日を返上してトラックを走らせるなどする人もおり、「『3年辛抱すれば家が建つ』と言われたほど給料も良かった」と今宮さん。「(きちんと残業が管理され)働く時間が減れば、手取りも減るはずだ。減収の痛みを感じる人もいるのでは」と語る。 安全性や心身への負担、そして金銭面…。トラック運転手の仕事の先行きに気をもむ。<物流の「2024年問題」> 5年間猶予されていた働き方改革関連法が4月から「自動車運転の業務」にも適用される。トラック運転手などの残業時間の上限は年960時間。何らかの対策がとられないと、運べる荷物量が24年度には19年度から14%、30年度は34%減るとの試算がある。
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