研究費の伝票、ロボットが自動で作ります――。DX(デジタルトランスフォーメーション)をビジネスモデル創出につなげようと、三重大学(津市)は支払伝票作成にソフトウェア型ロボットを活用した業務フローを構築し、パッケージとして今夏ごろ、第三者機関を通して全国の国公立大学へ販売することを目指している。きっかけは膨大な作業に悩む事務職員のアイデアだった。
業務フローは、三重大学財務部財務管理チーム調達室長の平山亮さん(42)らが2020年に構築した。調達室で処理する支払伝票は、大半は教職員の研究用のパソコンや教材、文房具、試薬などの購入費が占め、件数は年間4万にもなる。
「時間と手間のかかる大量の伝票処理を何とか効率化したい」。平山さんは19年、「ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)」に関するセミナーに参加。RPAはデータの入力や登録といったパソコン上の単純作業をソフト型ロボットが自動的に処理する技術だ。たとえば、エクセルに「納品日」「支払予定日」などのデータを入力しておくと、読み込んで自動的に別のシステムに入力してくれる。
RPAを支払伝票作成に応用すれば、データを手入力していた手間が省け、業務時間を大幅に削減できる。しかも、できた時間を教職員の教育研究支援に回すことができると思い、業務フローの構築に乗り出した。
プログラミングのスキルがなかった平山さんは、インターネットやユーチューブで調べたり、詳しい人に教えてもらったりして技術を習得。最初は2~3人で始めたが、全学で推進していこうと21年にRPA推進室(現・業務運営DX作業部会)が設置された。6人が各部署に出向いてRPAを導入。現在は各部署から1人以上が業務運営DX作業部会に派遣され、現場に適した活用をめざして、50人以上がRPAの知識の習得をしている。
RPAの導入により、調達室では23年度実績で4万6千件以上の支払伝票作成を自動化し、年間の業務時間を2300時間以上削減できたという。できた時間を教育研究支援に回し、調達室がRPAなどを活用することで4月から、教職員は一部の購入依頼書を手入力する手間を省くことができた。
この取り組みは関心を集め、国立大学法人や企業による視察の受け入れや情報交換は40件以上にのぼる。平山さんらは2月、構築した業務フローの著作権を三重大学に譲渡した。三重大学は販売仲介専門業者を通して他の国公立大学に販売する方向で調整を進めている。「年間数百万円の収入が目標。収益を生まないと認識されがちの事務部門が、収益を生み出すという発想の転換です」。平山さんは力を込めた。(小林裕子)
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