防衛省はスペースデブリ(宇宙ごみ)や不審な人工衛星の監視など、宇宙空間の安全保障に携わる航空自衛隊の大幅な部隊改編を計画している。全体を束ねる上級部隊として「宇宙作戦団(仮称)」を新設するほか、監視衛星の運用など任務拡大を踏まえ部隊を改編。要員を約670人に倍増する。2025年度予算の概算要求に関連予算約122億円を計上した。
空自の宇宙専門部隊は20年5月、府中基地(東京都)を拠点に約20人態勢で発足。監視システムを運用する「第1宇宙作戦隊」や衛星に対する電波妨害を把握する「第2宇宙作戦隊」といった任務を担う5部隊を府中基地と防府北基地(山口県)に配置し、上級部隊の「宇宙作戦群」が取り仕切っている。
25年度の改編計画は「宇宙作戦団」を新設するとともに、傘下に府中を拠点とする「第1宇宙作戦群」、防府北を拠点とする「第2宇宙作戦群」を設け、東西で安定的な運用体制を目指す。庁舎などの整備費として府中に約51億円、防府北に約71億円を投じ、全体の要員は24年度末の約310人から25年度末には約670人に増やす。
さらに26年度には静止軌道への監視衛星打ち上げが予定されており、その運用を担う「第3宇宙作戦隊」と、低軌道の物体を地上からレーザーで把握する「第4宇宙作戦隊」も新設する。また、日本政府は宇宙空間の安定的な利用に向けて空自の作戦運用能力を強化し、27年度までに「航空宇宙自衛隊」へと名称を変更する方針。
空自トップの内倉浩昭航空幕僚長は5日の定例記者会見で「宇宙専門部隊の増強は順調に推移している」との認識を示し、「『群』から『団』にもう一段大きくしていくので、人材の育成や資機材の整備をより堅実に進めていきたい。『団』は(空自の名称変更に至る)中間のマイルストーン、重要な結節になる」と述べた。
こうした部隊再編の背景にあるのは、宇宙空間で軍事的に優位に立とうとする中国やロシアの動向だ。GPS(全地球測位システム)や気象観測、通信など社会経済の重要なインフラでもある人工衛星を捕獲・破壊するため、「キラー衛星」といった対衛星兵器の開発を進めているとされる。【松浦吉剛】
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