慶応医学賞を受賞したグーグルディープマインドのデミス・ハサビスCEO(左から2人目)と京都大学の斎藤通紀教授(同3人目、20日、東京都新宿区の慶応大信濃町キャンパス)

慶応義塾大学は20日、医学や生命科学の優れた研究者を表彰する2024年の慶応医学賞の授賞式を同大信濃町キャンパス(東京・新宿)で開いた。米グーグルの人工知能(AI)開発部門、グーグルディープマインドのデミス・ハサビス最高経営責任者(CEO)と、京都大学の斎藤通紀教授に同賞が贈られた。

ハサビス氏は24年のノーベル化学賞も受賞する。1996年に始まった慶応医学賞の受賞者のうち、同氏を含め12人がノーベル賞に輝くことになる。

ハサビス氏はたんぱく質の構造を予測するAI「アルファフォールド」を開発(20日、東京都新宿区の慶応大信濃町キャンパス)

ハサビス氏は囲碁AI「アルファ碁」で有名になった旧ディープマインドの共同創業者で、たんぱく質の立体構造を高精度に予測するAI「アルファフォールド」の開発を主導した。創薬など医学や生物学の研究に広く革新をもたらした功績が評価された。

授賞式でハサビス氏は幼い頃からチェスに親しみ、独学のプログラミングでゲームAIを作ったことがきっかけとなり、キャリアをAI研究にささげることになったと振り返った。「ゲームはAIのアルゴリズムを開発するための方法であり、アルゴリズムを現実世界の課題、特に科学的な課題に適用したかった」と語った。

たんぱく質の構造予測はAIの科学的応用として最優先の課題の一つだったという。「AIを科学に取り入れ続ければ、発見の新たな黄金時代が到来する。今後10年間で、AIは非常に多くの科学分野で応用が始まるだろう」と展望した。

斎藤教授はiPS細胞から精子や卵子をつくる研究の第一人者(20日、東京都新宿区の慶応大信濃町キャンパス)

京大の斎藤教授は万能細胞であるiPS細胞から精子や卵子をつくる研究の第一人者だ。マウスのiPS細胞からつくった精子と卵子を受精させ、子どもを誕生させることに成功した。精子や卵子ができる仕組みを試験管内で再現する研究に取り組んできた。

授賞式で斎藤教授は、子どもの頃に抱いた「なぜ人は誕生したのか」「なぜ人は不死ではないのか」という素朴な疑問が研究の原点だと振り返った。精子や卵子という生殖細胞の研究はまだ途上で、多くの課題が残っているとして「私たちの成果を次世代に引き継いでいきたい」と若手科学者の活躍に期待した。

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